取材した人:吉本拓也
「はつかいち縦断みやじま国際パワートライアスロン大会」は、世界遺産である宮島・厳島神社の大鳥居からスタートする。選手たちが国の重要文化財である「千畳閣」で準備し、お祓いを受け、海へと向かう流れを見ていると、地元をあげて取り組んでいる大会であることが伝わってくる。
スイムは、宮島からカキ筏を迂回して泳ぎ、本土へ渡る2.5キロのコース。大鳥居とスイムキャップは何とも言えない組み合わせだと思ったが、それに出くわした観光客も驚きながら応援に加わっていた。
バイクは中国山脈を縦断する高低差約850メートルのワンウエイで距離は55キロ。バイクフィニッシュ手前の4~5キロは10%の勾配が続くが、このコースが好きで毎年チャレンジする選手も多いと聞く。確かにこんなコースを楽しめたら、怖いものはないだろう。
ランは標高約700メートル地点から900メートル地点まで登って降りる坂道のコースだ。きついバイクを終えてから高低差のある20キロは、蒸し暑さとの戦いもプラスされる。だが、吉和のような町の緑の里山を抜け、小川の水音を聞きながら橋を渡るコースを楽しめない日本人はいないと思う。スイムもバイクも、そしてランも楽しんでほしいという気持ちが込められていて、ここでも主催者側の大会に対する思いが伝わってきた。
タフなコース設定のためか、女性が少なくリレーが多いが、参加した選手は「距離は短いが、アイアンマン並に楽しめます」と満足そう。誰もが認めるチャレンジしがいのあるミドルディスタンスだと思う。
取材中に何度も感じたのは、このコースを設定し、運営するには地元の熱意がなければできないということだった。選手にもその思いが伝わっているようでレース中は常に気持ちのいい空気が流れていて、自分まで心地よい気分にさせてもらった。
本職は広告や雑誌のアートディレクター。徹夜仕事に追われていた20代後半、体調を崩したのをきっかけにジョギングを始め、マラソン大会に頻繁に参加するようになる。3年後の1999年に新島大会でトライアスロンデビュー。以来、トライアスロン好きが嵩じて大会ポスターやショップ広告、雑誌などの制作に関わるようになる。
トライアスロン歴12年目の43歳。