【大会概要】
■開催日
2021年4月24日(土):パラトライアスロン、エリート(男女)
2021年4月25日(日):エイジグループ
■開催地
広島県廿日市市役所周辺特設会場(主会場)
廿日市市パークゴルフ場沖(スイム)/廿日市市役所周辺(バイク・ラン)/ゆめタウン廿日市西側駐車場(フィニッシュ)
■天候
2021年4月24日(土):晴れ、最高24.3℃/最低15.0℃
2021年4月25日(日):晴れ、最高24.8℃/最低13.9℃
■参加者数
エリート、パラトライアスロン 約100名
エイジグループ 約300名
4月24日・25日の2日間に渡り、アジアトライアスロン選手権2021廿日市が開催された。
コロナ禍での開催となり、感染予防対策はもちろんのこと、選手・スタッフ・関係者もPCR検査を念入りに行い、大会に挑んでいた。
今回私は、初のMC(解説)として現地入りをし、今までのアスリートという立場とは全く違う形で大会に携わることになり、大会1つ開催するのにたくさんの方々のご尽力があり開催出来るのだと改めて感じ、感謝の気持ちでいっぱいになった。
初日はパラトライアスロン、エリートカテゴリー男女のレース。
この大会は、コロナ禍での国際大会としても注目された大会だった。
絶好のトライアスロン日和の中、7時半に各カテゴリ毎にスタート。
風もほぼなく波もない状況下だったが、早朝という事で水温・気温共に低めで、選手を苦しめているようにも感じた。
5年前のリオ五輪より、パラトライアスロンの人口も増え、日本のレベルも格段に上がってきている。最近、私自身パラトライアスロンに関わる機会があり、以前にも増して興味も湧き、選手の魅力を知ることも出来た。
レースでは、パラリンピックでメダル最有力候補選手である宇田秀樹選手を筆頭に、"世界で戦うためのレース"を意識して戦っていた。
視覚障害選手のガイドとして、世界トライアスロンシリーズ戦やワールドカップに参戦していた元エリート選手が携わっている事も心強い事だと感じられた。
それぞれ障害のカテゴリが違うパラトライアスロンの選手は、"みんなで世界に挑戦"という意識の中、それぞれがお互いの強さを認め合いながら競技をしている。その点も、パラトライアスロンの魅力だと改めて感じることの出来たレースとなっていたと思う。
エリート男子は、日本チームの目標である表彰台を独占した。
アジアだと日本が敵なしだと思われがちだが、2019年アジア選手権を制した香港の新星オスカー・コギンズ選手はじめ、アジア他国も力を入れてきている。
そんな中、優勝は今年4月に日本国籍を取得したばかりのニナー・賢治選手、2位に北條巧選手、3位に古谷純平選手が入賞した。順位だけでなく、各選手のタイムを見ても以前よりも力がついていると感じられる内容だっと思う。
レースは序盤からオスカー選手、ニナー選手、北條選手、古谷選手の4選手が先行し、バイクスタート時には、この中の誰かが優勝するだろうと予想できる展開。バイク終了時までには後続との差を3分近く広げ、ランスタートへ。
早朝と比べ物にならないくらい、気温も上がっていた。
走り出し、オスカー選手が快調に見えたものの、以前の走りより少しぎこちなさを感じた。
今回のコース設定は、8割が起伏があるコースだった為、ペースの刻み方は難しかったと思う。このコースで圧倒的な強さをみせたのは前評判の高かったニナー・賢治選手だった。
ランのリザルトだけをみてみても、北條選手、古谷選手も昨シーズンと比べると格段に力をつけていたが、ニナー・賢治選手は世界トップクラスとも戦えるようなすばらしい記録を叩き出していた。
この3名を軸に、日本男子はどこまで世界に挑めるのか今後が楽しみなレース内容となった。
エリート女子は、気温が24度まで上昇し、風も少し強くなってきた中でのスタート。
過去15年、アジア女王の座を日本は譲っていない。
今大会は、日本女子対、最近安定した力を付け始めている中国のメイギン・ソン選手と、ランに圧倒的な力があるカザフスタンのアリナ・シュイジーナ選手の戦いとなると予想していた。
今回日本チームは、東京五輪3枠目を目指したチーム戦と事前の記者会見で上田、佐藤両選手が発言していた為、レース展開の予測はついていた。
スイムアップから主導権を握ったのはメイギン・ソン選手だ。
私も何度かレースをしたことはあるが、スイムのパフォーマンスが高く、タフなバイクとランコースに強いので、今回の廿日市のコースは得意コースのはずだろう。
スイムで上田選手がやや遅れ、単独に。必死で追いつこうとするものの、第一集団の足並みが揃っていて、追いつく事が困難な状況となっていた。
最終的に先頭集団にいた日本人は佐藤選手、岸本選手の2名で、メイギン・ソン選手との同時ランスタートに。上田選手との差は約1分40秒。私の予想として、2分差だったら逆転はできると思っていた。
上田選手が猛追し、岸本選手、佐藤選手に追いついた。その頃、既にメイギン・ソン選手は約30秒程先行していた。
結果、優勝メイギン・ソン選手、2位に佐藤選手、3位に上田選手となった。
この結果により、オリンピックポイントが加算され、佐藤選手は46位から40位へ。
3枠確保の為には、30位以内に入る必要があるので、佐藤選手はこれから行われるワールドトライアスロンシリーズや、ワールドトライアスロンカップを転戦し、ポイント確保につとめることとなるだろう。
望みを信じて、戦い抜いてほしい。
日曜日も絶好のトライアスロン日和。約300名のトライアスロン愛好者が廿日市に集まった。
水温が20度を下回っている事を加味し、スイムパートは750mと変更に。
大会主催者側も久々の大会となる為、参加者の皆さまに対して"無理なく"と念入りに伝えていた。
参加者の方々も、自分の力量や、久々のレースという事も踏まえて、何より安全にと心に決めてスタートしていた。
コロナ対策の一環として、4つのウェーブに分かれ、2人ずつ5秒置きにスタート。通常、ウェーブ毎の一斉スタートだが、この大会を通してこの方法はより安全だなと新ためて実感した。
今回のスタートは、年齢別ではなく、スイムの速い順。
その効果はスイムアップのタイムにも如実に現れた。いつもはどうしても他の人と接触してしまうことが多いが、今回は自分のスペースを確保してスムーズに泳ぐことができた。順位はわかりにくいものの、本来持っている力を出せる形だと感じた。
レース全般を通して事故もなく進行することができ、参加者の皆さまからは満面の笑みが溢れていた。
スイムで無駄な労力を費やさなかったからか、参加者はランまでしっかり走ることができ、運営側からも"いつもの大会よりスムーズだった"との声があがっていた。
コロナ禍での開催となったが、感染予防対策含めひとりひとりが意識をして行えた事で今大会は大成功となった。
トライアスロン大会一つ開催するだけでも、本当にたくさんの方々の協力が必要となっている。
この事を胸に留めて、今後もトライアスロンの普及・発展に精進していこうと思う。
profile
トライアスロンのアジアカップで5回優勝するなど多くの大会で活躍し、2016年「リオデジャネイロオリンピック」日本代表として出場。2020年11月「日本トライアスロン選手権」を最後に現役を引退し、現在は講演会や企業・地域へのイベント出演など、幅広い分野で活躍中。2021年スポーツチーム「puente」を設立し、トライアスロンの普及やイベント活動に力を入れている。
スポーツチーム「puente」
https://tu-puente.com